Publish: 2022/12/1
Last Update: 2023/12/30
# 財務会計 キーワード集
- 財務会計の問題に出てくるキーワードを整理したものです。
注意事項!
個人的に調べた内容を記載しておりますが、その内容に関する保証はありません。
もし、誤っている箇所に気付いた場合は、こっそり教えて頂けると幸いです。
# 会計
- 英語でAccounting(アカウンティング)と言います。
- 経営の実績をもとに書類を作成することです。
# 財務会計
- 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書等を用いて経営状態をステークホルダーに報告することを目的とする活動です。
- 決まった処理方法、決まった表示形式で客観性を確保することが重要です。
# 管理会計
- 企業内部の意思決定社が適切な判断ができるようにすることを目的とする活動です。
- 社内の計算で使用するため、形式は自由です。
- 合理性が重要視されます。
# 財務
- 英語でFinance(ファイナンス)と言います。
- 貨幣価値の観点から投資案の意思決定(採択)を行う活動です。
- まだ発生していない将来の事象についても、定量的に評価を行います。現在価値に割引く(=現在の価値に換算する)という考え方をします。
# 企業会計原則
- 企業会計では、7つの一般原則があります。
# 真実性の原則
- 「企業会計は、企業の財政状況や経営成績の真実を報告するものであること」
- ウソの報告(いわゆる粉飾決算)をしてはならないという原則です。
# 正規の簿記の原則
- 「企業会計は、全ての取引を正規の簿記の原則に従って正確な会計帳簿を作成すること」
- 企業の取引は全てを帳簿に記すこと、つまり帳簿に乗らない取引があってはならないということです。
# 資本取引、損益取引区分の原則
- 「企業会計は、資本取引と損益取引を明確に区分すること」
- その期だけの支出(費用)と、中長期の支出(資産)を分けて帳簿に記す必要があります。
# 明瞭性の原則
- 「企業会計は、利害関係者に会計事実を明瞭に提供し、企業状況に関する判断を誤らせないこと」
- わかりにくい報告資料を作ってはいけないということです。
# 継続性の原則
- 「企業会計は、処理原則や手続き方法を毎期継続して適用し、みだりに変更しないこと」
- 償却費の処理方法や売上計上の基準等は、途中で変更してはならないということです。
# 保守主義の原則
- 「企業会計は、財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合、それに備えた会計を行うこと」
- 高い確率で損失が出そうな場合は、引当金等で事前に準備すべきということです。
# 単一性の原則
- 「企業会計は、異なる形式の財務諸表を作成する場合であっても、会計記録に基づいて、事実を歪めないこと」
- 財務資料等の派生資料を作る場合、一部の情報を使う等で事実を歪めるようなことはしてはならないということです。
# 貸借対照表
- その時の財政状況(資産と負債のバランス)を表すシートです。
- バランスシートとも呼ばれ、B/Sと略されることがあります。
- 資産の部、負債の部、純資産の部の3項目に分類されます。
# 資産の部
- 企業が保有している資産(現金、在庫、設備等)のことを表現する項目です。
- 資産は、流動資産/固定資産/繰延資産に分類されます。
# 負債の部
- 将来返済する義務のある企業の借金のことです。
- 企業が銀行等から借りたお金や、取引先に支払い義務のある買掛金等が該当します。
- 返済までの期日によって、流動負債/固定負債に分類されます。
# 純資産の部
- 株主からの出資額と利益剰余金を蓄積したものです。
- 返済義務のない資金の調達状況が表現されます。
# 貸借対照表の表示方法
- 流動性配列法と固定性配列法があります。
- 項目の並び順が異なります。
# 流動性配列法
- 流動資産/流動負債を上に表示し、固定資産/固定負債を下に表示します。
- 一般企業の多くがこちらを採用しています。
- 企業の支払い能力を把握しやすい特徴があります。
# 固定性配列法
- 固定資産/固定負債を上に表示し、流動資産/流動負債を下に表示します。
- 純資産を負債より上に表示する方法もあるそうです。
- 固定資産の多いインフラ系の企業で採用されます。
- 固定資産がどのような調達源によって賄われているかを把握しやすい特徴があります。
# 資産
# 流動資産
- 正常営業循環基準、1yearルールに適合した資産のことです。
# 固定資産
- 長期(1年より長い期間)に渡って使用される資産を言います。
- 有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分類されます。
# 繰延資産
- 本来は費用として処理されるものですが、長期に渡って効果が現れるため、資産として計上することが認められたものを言います。
- 例えば、創立費/開業費/社債発行費等の勘定項目が含まれます。
# 正常営業循環基準
- 正常営業循環基準は、企業の営業を行う上で循環する資産や負債を、流動資産/流動負債に記載することを定めたルールです。
- 例えば、「原材料の仕入/加工/在庫保管/販売/売掛金/現金化」という商売の一連の流れに乗るものが該当し、これらを流動資産として扱うということです。
- 多くの企業で「建物」は固定資産ですが、不動産販売業では商売の流れに乗るため流動資産として扱います。
# 1yearルール
- 1年以内に現金化または費用化する資産は、流動資産として扱うことを定めたルールです。
# 現金及び預金
- 現金、あるいは短時間で現金化することが可能なものを言います。
- 現金、普通預金、当座預金、定期預金等が含まれます。
# 債権の分類
- 「営業取引」で発生した債権は、受取手形、売掛金等に計上します。
- 「営業外の取引」で発生した債権は、貸付金、未収入金等に計上します。
# 有価証券
- 有価証券は保有目的によって勘定科目が変わります。
- 取得金額は取得にかかった手数料を含めて、有価証券として資産計上します。
# 売掛金
- 商品を販売した後、後日支払う約束をしている状態です。
- 後から現金を得られる権利がある状態です。
- 企業間信用取引とも呼ばれます。
# 前渡金、前払金
- 商品売買の手付金のようなものです。
# 未収金、未入金
- 「営業外の」土地等を売った時に発生する債権です。
- 営業上の売買は売掛金として計上します。
# 為替手形
- 売掛金と買掛金を結びつけて支払い手続きを減らすための手形です。
- 例えば、次のようなシナリオで為替手形が発行されます。
- A社は、B社に対する売掛金とC社に対する買掛金がある
- B社から現金を受け取った後、C社に支払うという手続きが必要になる
- 両社(B社/C社)に対して為替手形を発行し、両社間で現金のやりとりをしてもらう
- 結果、A社は入出金の手続きに関与することなく、効率的に事業を継続できる
- 為替手形を受け後った両社(B社/C社)では、それぞれ受取手形または支払手形として処理を行います。
- 手形の金額を払う人を、支払人、名宛人または引受人と呼びます。
- 手形の金額を受け取る人を、受取人または指図人と呼びます。
# 裏書譲渡
- 受取手形を他の人に譲渡して換金することです。
- 手形には決済期日があり、早期決済分が割り引かれて額面より手取りが少なくなります。(手形割引)
# 不渡手形
- 支払手形を期日までに支払いを終えていないと、その手形は不渡手形に変わります。
- 半年間で2度の不渡を出すと、銀行との取引ができなくなり、事実上の倒産とななってしまいます。
# 外貨建
- ドル、ユーロ等の海外のお金のことです。
- 外貨の流動資産は、決算日に決算日時点のレート(CR: Current rate)で換算します。
- 換算した結果、前年度と比べてレート変動による差額が生じた場合は、為替差損益としてP/Lに表示します。
- 仮に現在レートを1$=90円とし、1$=100円(取得時レート)で1,000ドルを持っている場合を考えます。
- 1,000ドル×レート差の10円のため、為替差損益は1万円である
# 売買目的有価証券
- 有価証券のうち、売買によってキャピタルゲインを得ることが目的の有価証券を言います。
- 株式は市場でいつでも売却できるので流動資産に分類します。
- 売却損益は有価証券売却益または有価証券売却損として処理し、いずれも営業外損益に表示します。
# 満期保有目的債権
- 満期まで保有して利息や額面を受け取ることが目的の有価証券(社債、国債等)を言います。
- 固定資産に分類します。
- 満期保有目的債権の売却は厳しい制限されており、合理的理由なき売却の損益は、特別損益として計上しなくてはなりません。
# 子会社株式、関連会社株式
- 企業を支配することを目的に保有する株式を言います。
- 保有する割合によって勘定科目が変わリます。
- 51%以上:子会社株式
- 20%〜50%:関連会社株式
- 19%以下:持分法適用会社
- これら株式は固定資産に分類されます。
- もしも売却して損益が出た場合は特別損益として処理します。
# その他有価証券
- 上記のいずれの目的でもない有価証券を言います。
- 例えば業務提携でお互いに株式を取得し合う持合株式等を言います。
- 固定資産に分類されます。
- 売却損益は特別損益として処理します。
# 有価証券の評価
- 有価証券は期末に金額の評価を行います。
- 売買目的有価証券は時価で評価を行い、昨年度との差額を当期損益に計上します。
- 満期保有目的、子会社株式、関連会社株式は取得価額のまま処理を行いません。
# 有形固定資産
- 長期にわたって営業に使用する資産を言います。
- 例えばパソコン、製造設備、社用車等のことです。
- 購入した資産は、取得にかかった手数料、搬入費用、整地費用等を含めた金額を固定資産として計上します。
- 固定資産は減価償却によって使用した分を徐々に減額します。
# 無形固定資産
- 形が無いけれど、数年に渡って使用効果を提供してくれるような資産をいいます
- 例えばソフトウェア、特許権、商標権等のことです。
# 投資その他資産
- 上記以外の固定資産をいいます。
- 例えば子会社株式や貸付金等のことです。
# 減損処理
- 固定資産が帳簿価額以上のキャッシュを生まないと判断される時、帳簿価額を適正価格まで減らすことを言います。
- 事業環境の変化、設備の陳腐化等によって発生します。
- 減損として処理した金額は、特別損失として処理します。
# 減損兆候の認識
- 帳簿価額と将来キャッシュフローの現在価値を比較して計算します。
- 帳簿価額より将来キャッシュフローが少なければ、減損兆候があると判断されます。
# 減損損失額の算出
- 具体的な減損損失の金額は、正味売却価値と使用価値を算出し、比較することで算出されます。
- 正味売却価値は、対象の固定資産を現時点で売却した場合に得られる金額のことを言います。
- 使用価値は、固定資産を使うことで将来産むだろうキャッシュフローの現在価値のことを言います。
- この2つを比較し、金額の多い方がその資産の価値となります。減損処理により、対象資産をこの資産価値まで減らします。
# 減損損失の計算例
- 例として以下の条件で計算します。
- ①簿価(5,000万円)
- ②正味売却価値(4,000万円)
- = 時価(4,500万円) - 処分費用(500万円)
- ③使用価値(3,950万円)
- = 各期キャッシュフロー(1,000万円) × 4年の割引(3.9505)
- まず、減損徴候の認識を行います。
- ①簿価(5,000万円)と③使用価値(3,950万円)を比較すると、簿価より実際の価値が少なくなっていることが分かるので、減損兆候があることがわかります。
- 次に減損の金額を計算します。
- ②正味売却価値(4,000万円)と③使用価値(3,950万円)を比較すると、正味売却価値の方が高いことが分かります。
- そこで、①簿価(5,000万円)から②正味売却価値(4,000万円)まで減らした場合の金額を算出します。
- 減損損失額(1,000万円) = 簿価(5,000万円) - 正味売却価値(4,000万円)
- この減損損失を特別損失として処理し、簿価を減らしたら減損処理は完了です。
# 繰延資産
- 投資の効果が数年に渡って発生する費用を資産として表示するための項目です。
- 繰延資産から毎年費用化していくことで、適切な期に費用として処理されるようになります。
# 創立費
- 会社を立ち上げる際に掛かった費用をまとめたものです。
- 繰延資産として資産に表示します。
- 会社登記の際に必要な免許税や、定款作成の費用が創立費に含まれます。
- 設立から5年以内に償却するお約束です。
# 開業費
- 会社の設立から営業開始までにかかった開業関連の費用をまとめたものです。
- 繰延資産として資産に表示します。
- 例えば、名刺作成費用、 広告費用等の費用が開業費に含まれます。
- 開業から5年以内に償却するお約束です。
# 株式交付費
- 株式を発行する際の手続きにかかった費用をまとめたものです。
- 繰延資産として資産に表示します。
- 新株発行、自己株式の処分等の費用が株式交付費に含まれます。
- 株式交付から3年以内に償却するお約束です。
# 開発費
- 技術開発や、市場開拓にかかった費用をまとめたものです。
- 繰延資産として資産に表示します。
- 5年以内に焼却するお約束です。
# 社債発行費等
- 社債を発行した時の費用をまとめたものです。
- 繰延資産として資産に表示します。
- 利息法で月割の償却を行うお約束です。
# 負債
# 流動負債
- 企業の主たる業務から発生した債務です。
- 1年以内に支払い期限が到来するものが流動負債に分類されます。
# 支払手形
- 代金の支払いにおいて、現在ではなく期日までに払うことを約束する書類です。
- 手形に支払い義務がある人にとっては支払手形という名称ですが、同じ手形であっても受け取り側はそれを受取手形と呼びます。
# 買掛金
- 仕入を行った際にその対価として払う現金を掛けにすることです。
- 掛けにすると支払いが少し先まで猶予されます。
- ちなみに、固定資産などの支払い債務は未払金と呼び、営業活動とそれ以外の活動で分類されます。
# 短期借入金
- 返済期限が1年以内の借入金のことを言います。
- 金融機関(銀行等)から借りた現金が該当します。
# 未払金
- 営業外の取引で生じた未払いの債務のことです。
- 有価証券や土地を購入することで発生します。
- 支払い期日が1年より先のものは、長期未払金として固定負債に表示します。
# 長期未払金
- 未払金(営業外の取引で生じた債務)の支払い期日が1年より長い猶予があるものを言います。
# 前受金
- 商品を引き渡す前に代金の一部などを受け取った時の勘定です。
# 預り金
- 本来は従業員や取引先が負担すべきコストを一時的に預かっているときの勘定です。
- 例えば、源泉徴収(所得税)などがあります。
# 偶発債務
- 取引先の倒産等、一定確率で発生する債務(支払う義務)を偶発債務と言います。
- バランスシートに乗せる必要はありません。そのため、仕訳は不要です。
# 社債
- 市場から資金を調達するため、会社として発行した債券のことです。
- なお、国が発行した債権は国債と言います。
- 社債の発行
- 社債は、債券に記載された金額(額面)とは異なる金額(払込価額)で購入を募ることができます。
- 額面と払込価額の差額は、償却原価法によって毎年額面に近づけていく調整処理を行なっていきます。
- 社債の運用
- 社債は定期的に利息を払う必要があります。
- 支払う利息額は、額面×利率の金額です。
- 社債の償還
- 満期を迎えたら、額面(債券に記載された金額)を支払い債権との交換を行います。これを償還と言います。
# 退職給付引当金
- 会社として退職金制度を用意している場合、毎年退職給付引当金として費用計上することが認められています。
# 純資産
- 株主から調達した資金や、企業経営によって蓄積した剰余金のことです。
- 自己資本とも呼ばれます。
- 返済の義務がない点が負債と異なります。
# 資本金
- 過去に出資を受けた金額の累計額です。
- 資本金は企業の規模を表す1つの指標なので、一定ラインより少ない場合に様々な行政支援を受けることができます。
- 一方、資本金が多いと取引先からの信用が得られるメリットがあります。
- 資本金の払込を受けた時、その金額の1/2までを資本剰余金とすることができます。あるいは全額を資本金とすることもできます。
- 公開会社(株式の購入者を限定しない会社)は、会社を設立する際に、発行可能株式の1/4を株式として発行する必要があります。
# 利益剰余金
- 企業が獲得した利益の積み重ねです。
- 利益準備金とその他利益剰余金で構成されています。
- 会社がコンスタントに利益を積み上げていくことで利益剰余金が大きくなります。
# 資本剰余金
- 利益以外を源泉とする剰余金のことです。
- 資本準備金とその他資本剰余金で構成されています。
# 自己株式
- 市場に発行した株式を自ら取得したものです。
- 純資産の部でマイナス表記されます。
- 自己株式を取得するメリット
- 買収の対価として使用できます
- 敵対的買収を防ぐことができます
- 市場に流通する株式数が減ることで、一株当たりの価値が上昇します
- 自己株式取得の手続き
- 通常は株主総会の通常決議で合意を得ることが必要です。
- ただし特定株主から買い取る場合は、特別決議での承認が必要になります。
- 自己株式の消却(※償却ではない)
- 株式をなくすことです。
- また、自己株式は買収の単価として使用されることもあります。
# その他有価証券評価差額金
- 持ち合い株式(提携企業間でお互いに株を持つ等)の簿価と時価の差額のことです。
- 持ち合い株式は、簿価と評価額の差額を毎期算出します。
- 算出した差額は、損益計算書ではなく、貸借対照表(純資産)で表示されます。
# 新株予約権
- 将来、自社の株式をあらかじめ定めた金額で購入することができる権利のことです。
- 新株予約権を社員に発行すると、株価を高めることで利益が得られるようになるので、モチベーションを高めることができます。
# 配当金
- 企業が得た利益の一部を株主に対して現金で利益還元することを配当と言います。
- 損益計算書の税引後純利益から配当金を引いた残額が、貸借対照表の利益剰余金になります。
# 配当の積み立て
- 配当金を出した場合、決まった額を利益準備金または資本準備金として積み立てなければなりません。
- 積み立ての目的は、配当金等による企業財産の過剰な流出を避け、支払い義務のある債権者の権利を守ることです。
- 会社法第445条にて、以下いずれかの少ない金額を積み立てることが義務付けられています。
- 配当金として払った総額の1/10
- 資本金×1/4 - (積立済みの資本準備金+積立済みの利益準備金)
- 2つ目の計算式はわかりにくいですが、要するに「資本準備金と利益準備金の合計が、資本金の1/4を超えるように積み立てましょう」ということです。
# 配当の原資
- 配当の原資は、その他資本剰余金か、その他利益剰余金です。
- その他資本剰余金から配当をする場合は、資本準備金に積み立てを行います。
- その他利益剰余金から配当をする場合は、利益準備金に積み立てを行います。
# 分配可能額
- 剰余金の配当や自己株式の取得といった方法で株主に還元を行う場合、その金額に上限が設定されています。これを分配可能額と言います。
- 債権者の権利を守るため、会社法によって定められています。
- 分配可能額は、純資産総額から資本金と準備金を差し引いた残額で計算できます。
- また、配当によって純資産が300万円を下回る場合、配当してはならないという上限もあります。
# 損益計算書
- 企業の経営成績を表す書類です。
- 「利益 = 収益 - 費用」という関係があります。
- 利益を増やすためには、収益を増やすか、費用を減らすことが必要です。
# 売上高総利益
- 売上総利益(粗利) = 売上高 - 売上原価
# 営業利益
- 営業利益 = 売上高総利益 - 販売費及び一般管理費
# 経常利益
- 経常利益 = 営業利益 - 営業外収支
# 税引当期純損益
- 税引前当期純損益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
- 値がプラスの時は「税引前当期純利益」と表記できます。
- 赤字(値がマイナス)の時は、当期純損益と表記します。
# 売上高
- 商品販売やサービス提供などの営業活動の結果、当期の販売金額の総額を表す値です。
- ただし、以下の4項目は売上高から控除します。
- 売上戻り
- 売上値引
- 売上割戻
- 売上割戻引当金繰入
# 売上戻り
- いわゆる返品のことです。全額返金します。
- 売上を取り消す仕訳を行います。
# 売上値引
- 販売した後に値引きをすることです。一部返金します。
- 不良品や破損等の一定の条件で適用することができます。
# 売上割戻
- 購入商品の数に応じてキャッシュバックを行うことです。
- リベートやキックバックとも呼ばれます。
- ボリュームディスカウントやまとめ買いセールが含まれます。
# 売上割戻引当金繰入
- 売上割戻(キャッシュバック)に備えた引当金です。
- 来期発生する想定見込み額を見積もって計上します。
# 売上割引
- 売掛金が早期に入金された時、一部(利息分)を減額することです。
- 早期入金によって企業経営が安定するので、その分を返金します。
- 商品の売買ではなく、決済に関する事項なので営業外費用として扱います。
# 収益
- 収益とは、企業に現金の流入をもたらすあらゆる活動結果を示します。
- 営業活動の結果得られる「売上高」だけでなく、営業外活動によって得られる「受取利息」「受取配当金」「固定資産売却益」等を全て含めた表現です。
# 販売費及び一般管理費
- 販売業務や管理業務から発生した費用の総額です。「販管費」と省略されることがあります。
- 販売費は、販売業務に関連して発生した費用のことです。
- 一般管理費は、全般的な管理業務で発生した費用のことです。
- 例えば、販管費には以下のようなものが含まれます
- 商品運搬の費用
- コマーシャル等の広告宣伝費用
- 社会保険等の福利厚生費用
- 本社社員の給与、役員給与
- 水道光熱費
- 固定資産等の減価償却費
# 営業外収支
- 主な営業活動ではない収入と支出を表現する項目です。
- 営業外費用と営業外収益のことです。
# 営業外費用
- 営業外の活動で発生した費用です。以下のようなものが含まれます。
- 借入金から生じる支払利息
- 社債から生じる社債利息
- 売上割引
- 有価証券売却損
# 営業外収益
- 営業外の活動で発生した収入です。以下のようなものが含まれます。
- 預金から生じる受取利息
- 保有する社債による有価証券利息
- 保有する株式による受取配当金
- 仕入割引
- 有価証券売却益
# 特別損益
- 通常の営業活動において、毎期連続では発生しないような珍しい損益の項目です。
- 以下のようなケースがあります。
- 固定資産の売却
- 災害損失
- 固定資産の売却は簿価と売価の差額が計上されます。金額によって表示項目が異なります。
- 差額がプラスの場合、固定資産売却益
- 差額がマイナスの場合、固定資産売却損
# 収支のタイミング
- 商品の受け渡しと現金支払いのタイミングは日付が異なります。
- どういうタイミングで計上するべきか、いくつかのパターンがあります。
# 発生主義(費用計上の原則)
- 会計期間内に「発生」した費用は、当期の費用として処理をする考え方です。
# 実現主義(収益計上の原則)
- 現金、手形、売掛金等の貨幣性の高い資産を受け取った時に収益とする考え方です。
# 現金主義
- 現金の受け渡しがあった時に費用や収益を計上する考え方です。
# 工事収益基準
- 長期の請負工事に関する収益は、進捗度に応じた計上を行う工事進行基準による処理が許可されています。
- 例えば、第1Qの進捗が20%の場合、見込み工事総額の20%を計上する等です。
# 工事完成基準
- 工事が完成した時に計上する考え方です。
# 帳簿
- 取引や資産・負債・お金の流れを記録した台帳のことを言います。
- 日々の取引記録を残すことで、正確な決算書を作成し、数字に基づいた適切な意思決定に役立てます。
- 眺望は、主要簿と補助簿に分類されます。
# 帳簿の対応フロー
- 取引を行った結果は、以下の順番に処理していきます。
- 取引の実行
- 仕訳
- 総勘定元帳へ記載
- 合計残高試算表を作成
- 精算表を作成
- 財務諸表を作成
# 主要簿
- 主要簿は、どの企業も必ず備えなければならない必須の帳簿のことです。
- 仕訳帳と総勘定元帳の2種類に分類されます。
# 仕訳帳
- 取引内容を日付の順番で記載した帳簿です。
- 仕訳帳には、普通仕訳帳と特殊仕訳帳の2種類があります。
# 普通仕訳帳
- 「全ての取引」を取引のあった順に記録する帳簿です。
# 特殊仕訳帳
- 頻繁に発生する「特定取引だけ」を記入する仕訳帳です
# 総勘定元帳
- どの勘定科目がどれだけ損減したかを把握するため、すべての取引を集計した帳簿のことです。
- 集計の結果、勘定項目ごとに金額が整理されるので、それぞれの残高を把握したいときに役立ちます。
# 転記
- 仕訳帳から総勘定元帳に書き写すことを転記と言います。
# 補助簿
- 必要に応じて備える帳簿です。
- さまざまな種類の帳簿がありますが、おおまかに補助記入帳と補助元帳に分類されます。
# 補助記入帳
- 取引が発生した順に内容を記録する帳簿です。
- 以下のようなものがあります。
- 現金出納帳
- 当座預金出納帳
- 売上帳
- 仕入帳
- 受取手形記入帳
- 仕入手形記入帳
- 等
# 現金出納帳
- 現金の入出金を記録する帳簿です。
# 当座預金出納帳
- 当座預金の入出金を記録する帳簿
# 売上帳
- 取引先、商品名、数量、単価単価等を記録する帳簿です。
# 仕入帳
- 取引先、商品名、数量、仕入原価等を記録する帳簿です。
# 補助元帳
- 取引相手や内容で区別して記録する帳簿です。
- 以下のようなものがあります。
- 売掛金元帳
- 買掛金元帳
- 商品有高帳
- 等
# 伝票式会計
- 仕訳帳ではなく「伝票」を使って会計を記録する方法です。
- 伝票に取引の内容を記録しておき、その内容を総勘定元帳に転記することで会計処理を行なっていきます。
- 伝票には以下の種類があります。
- 入金伝票
- 出金伝票
- 仕入伝票
- 売上伝票
- 振替伝票
# 3伝票制
- 伝票式会計の実施方法の1つです。
- 入金、出金、振替の伝票だけを使います。
# 5伝票制
- 伝票式会計の実施方法の1つです。
- 入金、出金、振替、売上、仕入の伝票を使います。
# 単一仕訳帳制
- 1つの仕訳帳に全ての取引を記帳して、綜勘定元帳に転記する方法を単一仕訳帳制と言います。
# 複数仕訳帳制
- 普通仕訳帳、現金出納帳、受取手形記入帳など、複数の帳簿を使用して仕訳を行う方法です。
- 複数の担当者がそれぞれの担当範囲で記入できるように考案された方式のようです。
- 昔はパソコンがなく手書きだったこともあり、大企業で1人の担当者がすべての取引を把握するのは困難だったから生まれた経緯だそうです。
- それぞれの帳簿に記載された取引内容を、総勘定元帳に転記して会計処理を行います。
# 特殊仕訳帳制
- 補助記入帳(現金出納帳、仕入帳、受取手形記入帳..等)のことを特殊仕訳帳と呼び、これらを仕訳帳のように使用する方式です。
- 特殊仕訳帳から総勘定元帳への転記を行います。
# 合計残高試算表
- 総勘定元帳の記入が正しく行われたかを確認する表のことです。
- 決算整理事項の金額を調整して、当期収益・当期費用を適正化する計算を行います。
- 決算整理事項とは、例えば売上原価の算出、減価償却費の算出、引当金の算出、等を言います。
# 試算表
- 仕訳や転記のミスを抽出する目的として作られる表です。
- 貸方と借方に勘定ごとの計算結果を記載して合計を比較します。左右で合計が一致しなければ間違いがあると考えられます。
- 試算表は3種類に分かれます。
- 合計試算表: 各勘定における貸方の合計と借方の合計を比較する
- 残高試算表: 各環境における貸方残高と借方残高を集計する
- 合計残高試算表: 合計試算表と残高試算表の機能をひとまとめにする
# 精算表
- 決算の見通しを立てるために作成する表です。
# 株主資本変動計算書
- 会計期間における純資産の変動を表す書類です。
- 期首の純資産に当期の変動明細額を記載することで、増減量と期末の純資産を表現します。
# 決算整理
- 決算の時点において、損益計算書や貸借対照表等の書類の最終調整を行うことです。
- 期末に一度だけ行う特別な作業です。
# 売上原価(三分法)の計算
- R5 - 問1
- 三分法は、商品売買の取引を仕入、売上、繰越商品の3つの勘定を使って記帳する最もポピュラーな記帳方法です。
- 製品として販売した分が売上原価として計上され、販売されていない分は繰越商品に計上されます。
- 売上原価は下記のように期首在庫、当期仕入、期末在庫の3つを使って計算します。
- 売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 - 期末在庫
- 計算式を覚えるより箱図を作れるようになった方が計算間違いが少なく済みます。
# 棚卸資産(先入先出法: FIFO)の計算
- 先入先出法は、FIFO(First in, First out)とも言います。
- 先に仕入れた製品から順に売れていった、と仮定するシンプルな計算方法です。
- 仕入より期末在庫が少ない場合、以下のようなシンプルな計算手順で売上原価を算出できます。
- 期初在庫の額と当期仕入の額を足し算する-①
- 当期仕入の1個当たり金額を算出する-②
- 期末在庫に②の金額を掛け算する-③
- ①から③を引いた残りが販売できた分なので、売上原価になったものと考える
# 移動平均法
- R5 - 問1
- 棚卸資産の評価額を計算する方法の一つ。
- 商品を仕入れるたびに移動平均で在庫の評価額を算出し、その時点の平均額で販売したものとして考える計算方法です。
# 棚卸資産減耗損
- 期末に在庫商品を数え、紛失や破損等による損失あれば損失として計上します。
- 棚卸資産減耗損は売上原価として計上することが原則ですが、販管費として計上することも可能です。
# 減価償却費
- 減価償却は、建物や機械等の長期に渡って使用する固定資産を使用期間に応じて費用化を行うことです。
# 法定耐用年数
- 法律で定める一般的に使用できる年数のことです。
- もしも各企業が自由な期間で償却したら、決算の数字を操作したり複数の計算書を比較できなくなってしまうので、一律に定めています。
- 実際の使用期間とはずれが生じる場合があります。
# 定額法
- 毎期、同じ金額を償却する方法です。
- 定額法で償却する割合は 1÷耐用年数 で算出でき、これを償却率と言います。
- 定額表の償却金額は、以下の計算式で算出できます。
- 定額法の減価償却費 = 取得価額 × 償却率
# 定率法
- 毎期、固定資産の残額に償却率を掛けて費用を算出する方法です。
- 残額は年数を追うごとに減少するため、毎期の償却額は徐々に減少します。
- 定率法の償却金額は、以下の計算式で算出できます。
- 定率法の減価償却費 = (取得価額 - 償却済金額) × 償却率
# 200%定率法
- 定額法で算出された償却率の2倍(200%)の償却率を使い、定率法の計算方式で償却する方法です。
- (例) 5年償却の場合、定額法だと20%の償却なので、200%定率法ではその倍の40%を償却率とします。
- 定額法では購入時の金額に償却率を掛けますが、定率法では残存価格に償却率を掛けて償却額を算出します。
- ただし、法定耐用年数を過ぎたら固定資産の残存価値が1円になるように償却する必要があるので、一定水準以上まで償却をしたら残りを定額法で処理します。
- 定率法から定額法へ切り替わる残存金額の閾値のことを償却補償額といいます。
- 償却対象の残高が償却補償額を下回っている場合、その年度以降は定額法の償却を行います。
- この定額法で使われる償却率のことを、改定償却率と言います。
# 生産高比例法
- 対象の固定資産がライフサイクルの中で生産する量をベースに、今期に生産した数の分だけ償却を行う方法です。
- 取得価額 × (当期生産量 ÷ 総生産可能量)
# 引当金
# 貸倒引当金
- 取引先の倒産等により、売掛金等を回収できなくなることを貸倒といいます。
- 来期以降で発生する貸倒の可能性をあらかじめ見積もることで、当期の費用として貸倒引当金を計上することができます。
- もしも貸倒引当金が未設定の状態で貸倒が発生した場合は、貸倒損失として計上します。
# 貸倒引当金の計上条件
- 以下に記載する3つの要件を全て満たす場合に限り、引当金計上が可能です。
- 将来発生する貸倒に対する費用であること
- 当期(あるいは当期以前)に発生した債権に関する貸倒であること
- 過去の発生状況等から、発生可能性や金額を合理的に見積もることができること
# その他の引当金
- 修繕引当金
- 退職給付引当金
- 賞与引当金、等
# キャッシュフロー計算書
- 現金の流入、流出を表現する計算書類です。
- 会社法では作成必須となっていませんが、金融商品取引法で作成が義務付けられており、上場企業は作成必須となります。
- キャッシュフロー計算書は、営業活動、投資活動、財務活動の3区分で表現されます。
- 表示方法は、直接法と間接法の2種類があります。
- この2つの方法で計算結果は同じになりますが、営業活動によるキャッシュフローにおける計算過程の表記が大きく変わります。
# 営業活動によるキャッシュフロー
- 主な営業活動によって出入りした現金を表現する項目です。
- 商品とサービスの販売による収入(+)
- 商品とサービスの購入による支出(−)
- 従業員や役員に対する報酬による支出(−)
- 災害による保険金の収入(+)
- 損害賠償金の支払い(−)
- 法人税の支払い(−)
- 等
# 投資活動によるキャッシュフロー
- 有価証券、固定資産等の投資に関わる現金の出入りを表現する項目です。
- 固定資産の取得による支出(−)
- 固定資産の売却による収入(+)
- 有価証券の取得による支出(−)
- 有価証券の売却による収入(+)
- 貸付による支出(−)
- 貸付金の回収による収入(+)
- 等
# 財務活動によるキャッシュフロー
- 増資、借入や、それに伴う配当や利息といった財務活動による現金の出入りを表現する項目です。
- 株式発行による収入(+)
- 自己株式の取得による支出(−)
- 配当金の支払いによる支出(−)
- 社債発行による収入(+)
- 社債の償還による支出(−)
- 借入による収入(+)
- 借入金の返済による支出(−)
- 等
# 収益及び費用と、キャッシュの違い
- 損益計算書では利益が出ているのに、キャッシュが不足することで倒産するケースもあります。黒字倒産といいます。
- 固定資産を減価償却費として長期に費用化したり、在庫は売れるまで売上原価にならないため、実際のキャッシュの出入りと損益計算書では差異が生じるためです。
# 直接法
- キャッシュフロー計算書の作成方法の1つです。
- 現金の流入、流出を並べて集計することでキャッシュの流れを明らかにします。
- メリットは、損益計算書との対比が行いやすい点です。
# 間接法
- キャッシュフロー計算書の作成方法の1つです。
- 損益計算書の金額から、現金収支を伴わない取引を調整することでキャッシュの流れを明らかにします。
- メリットは、キャッシュフローと利益で差が出ている原因を見つけやすい点です。
# キャッシュフロー計算書の作成手順(間接法)
- 二次試験でも頻出の論点なので、手書きで作成できるようにしておく必要があります。
- 営業キャッシュフローの計算
- 損益計算書の情報をもとにキャッシュフローを計算する
- 税引前当期純利益を算出する
- 減価償却費を加算する
- 営業外収益(受取利息、受取配当金等)を控除する
- 営業外費用(支払利息等)を加算する
- 貸借対照表(資産の部)の情報からキャッシュフローを計算する
- 前期と当期における売上債権の差額を加減算する
- 債権が増えていたら未回収(キャッシュアウト)
- 債権が減っていたら回収完了(キャッシュイン)
- 前期と当期における棚卸資産の差額を加減算する
- 棚卸資産が増えていたら在庫増加(キャッシュアウト)
- 棚卸資産が減っていたら販売成功(キャッシュイン)
- 前期と当期における売上債権の差額を加減算する
- 貸借対照表(負債の部)の情報からキャッシュフローを計算する
- 前期と当期における仕入債務の差額を加減算する
- 債務が増えていたら借入(キャッシュイン)
- 債務が減っていたら返済(キャッシュアウト)
- 前期と当期における仕入債務の差額を加減算する
- ここまでの金額を「小計」としてキャッシュフロー計算書に記載する
- 現金収支を修正
- 配当や利息の受取額を加算する
- 支払利息を減額する
- 法人税の支払い額を減額する
- (B/Sに未払法人税がある場合、その差額も計算に含める)
- ここまでの計算結果を「営業活動によるキャッシュフロー」とする
- 損益計算書の情報をもとにキャッシュフローを計算する
- 投資キャッシュフローの計算
- 固定資産、有価証券、貸付金の加減算を行う
- 「投資活動によるキャッシュフロー」とする
- 財務キャッシュフローの計算
- 借入、社債(発行、償還)、株式(発行、自己株式取得)の加減算を行う
- 「財務活動によるキャッシュフロー」とする
# 現金
- 以下のものが現金です。
- 手元の現金
- 普通預金、当座預金
# 現金同等物
- 取得から満期まで3ヶ月以内の短期投資を現金同等物と言います。
- 具体的には、以下のもので期間の短いものは現金同等物と言えます。
- 定期預金
- コマーシャルペーパー
- 投資信託
# 税務会計
- 納税すべき税金がいくらあるかを算出するために行う会計のことを言います。
- 課税所得に法人税率を掛けることで払うべき税金が算出されます。
- 税法が定める「課税所得」と企業会計で算出される「利益」は考え方の差異があるため、その調整を経て、支払うべき税金を算出します。
# 将来減算一時差異
- 税法によって算出された納税金額より多くの税金が発生した場合、その余剰分を「繰延税金資産」として資産に計上します。
- 将来に支払う税金を減らす効果があります。
# 将来加算一時差異
- 税法によって算出された納税金額より少なく税金が発生した場合、その余剰分を「繰延税金負債」として負債に計上します。
- 支払いが足りなかった分は、将来払う際に加算して支払う必要があります。
# 永久差異
- 企業会計と税務会計の違いが将来にわたって解消されないものを永久差異と言います。
- 企業会計と税務会計で、費用(損金)処理できる範囲に差がある等のケースがあります。
- (例)企業会計で交際費は費用であるが、法人税法では一定額を超えると損金処理できない
# 繰延税金資産、繰延税金負債の処理方法
- 取り崩す際は、P/Lで「法人税等調整額」として処理をします。
# 連結財務諸表
- 子会社、関連会社を含め1つの企業グループとした場合の財務諸表を言います。
- 企業グループ全体の状況を正確に伝えることが目的です。
- 同じ企業グループ内で行った取引等は企業グループ内で移動しただけとも考えられるので、控除する必要があります。
# 子会社の判断
- 子会社は、会社を支配しているかどうかで連結かどうか判断されます。これを支配力基準と言います。
- 次のケースに合致する場合、その会社は子会社であると言えます。
- 株式を51%以上を有している場合
- 株式を40%以上有しており、かつ実質的に経営を支配している場合
- なお、実質的な経営の支配とは下記のような状況をいいます。
- 密接な関係のある者の議決権を合わせることで50%を超える権利を持つ場合
- 役員の過半数を親会社の人員が占める場合
- 事業方針を支配するような契約がある場合
- なお、子会社の更に子会社も連結財務諸表に含める範囲です。
# 関連会社の判断
- 関連会社の範囲は、会社に影響を与えているかどうかで判断されます。これを影響力基準と言います。
- 株式を20%より多く有している場合
- 株式を15%以上有しており、かつ企業経営に影響を与える要件がある場合
- 企業経営に影響を与える要件とは下記のような内容をいいます。
- 自社の役員が当該会社の取締役に就任している
- 重要な融資を行なっている
- 重要な技術提供を行なっている
- 重要な事業の取引がある
# 関係会社と関連会社
- 関連会社は少なくとも15%以上の株式を持つことで会社経営に影響を与えている会社のことを言います。
- 関係会社は、親会社/子会社/関連会社を含めた企業グループ全体を指す言葉です。
# 連結B/S(貸借対照表)の作成
- 親会社の貸借対照表と子会社の貸借対照表を合算します。
- 単純に合算しただけのものを連結調整前財務諸表と言います。
- 連結の修正仕訳を行います。
- 親会社側の投資(子会社株式勘定)と子会社の資本(純資産項目)の相殺消去
- 親子間での債権/債務を相殺消去
- など
# 連結P/L(損益計算書)の作成
- 親会社の損益計算書と子会社の損益計算書を合算します。
- 連結の修正仕訳を行います。
- 親子間での取引(売上、利息、配当等)を相殺する
- 子会社の純利益をから非支配株主に帰属する分を非支配株主持分とする
- 未実現利益(子会社在庫に乗っている利益分)の消去
- など
# のれん
- のれんはブランド力のことです。
- 買収をする際、買収先企業の時価(純資産)より多くの金額を払った場合、その超過支払分を「のれん」として資産に計上します。
- 資産計上されたのれんは20年以内の期間で償却をします。
# 負ののれん
- 純資産より少ない金額で買収をした場合、その差額を「負ののれん」として当期費用で処理します。
# 持分法
- 連結対象ではない投資先会社の損益を反映します。
- 「持分法による投資損益」として一行で表現されることから一行連結とも呼ばれます。
# 本支店会計
- 企業が本店の他に支店を用意した時に使われる会計制度です。
- 支店独立会計制度と、本店集中会計制度があります。
# 支店独立会計制度
- 本店側で「支店」の勘定を、支店側で「本店」の勘定を持つ会計制度です。
- 本店と支店間でやり取りがあった際に本店/支店の勘定を使用します。
- 本店/支店の勘定は常に対になっているので金額が一致します。
# 本店集中会計制度
- 支店間の取引を全て本店を経由したものとみなして記帳する方法です。
- 支店同士のやり取りも全て「本店」勘定に集約し、本店から○○支店の勘定へ送る手続きをします。
- メリットは、本店側でどの支店にどれだけのお金が流れているかを集中管理できることです。
# 原価
- 製品製造に掛かったコストを合算したものです。
- 以下の4つに分類されます。
- 直接材料費
- 直接労務費
- 直接経費
- 製造間接費
- 販売やその他の管理費は原価に含まれません。
- 製品は販売された時に売上原価となります。
# 材料費
- 加工前の仕入れた材料にかかるコストです。
- 直接材料費と間接材料費に分類されます。
# 直接材料費
- 製品に組み込まれる材料のコストで、以下のようなものがあります。
- 主要材料費: 製品の主要部分に使う材料の原価
- 購入部品費: 購入して加工せず製品に組み込む材料の原価
# 間接材料費
- 製品の組み立て作業等の周辺業務で使われる材料のコストで、以下のようなものがあります。
- 補助材旅費: 塗料等、補助的に消費される材料の原価
- 工場消耗品費: 製品生産に必要な消耗品の原価
- 消耗工具器具備品費: 耐用年数が1年未満かつ少額の器具の原価
- 間接材料費は製造間接費に集約され、配賦されます。
# 労務費
- 作業員に対する賃金のコストです。
- 労務費は、直接労務費と間接労務費に分類されます。
# 直接労務費
- 直接工が直接作業を行ったことに対する賃金コストです。
- 直接工は、製品製造に直接携わる人員のことです。
- 直接作業は、製品製造の業務のことです。周辺業務を含みません。
# 間接労務費
- 直接労務費に含まれない労務費のことです。
- 例えば、以下のようなものがあります。
- 直接工が間接作業を行なった分の賃金
- 間接工の賃金
- 賞与、手当
- 退職給付引当金
- 法定福利費
# 経費
- 材料費でも労務費でもないコストを言います。
- 経費は直接経費と間接経費に分類されます。
# 直接経費
- 製品製造に直接的に関与する経費のことを言います。
- 直接経費はそれほど種類が多くありません。以下のようなものがあります。
- 外注加工賃: 生産を外部に委託している場合の原価
- 特許権使用料: 他企業の特許技術を使用する際の原価
# 間接経費
- 製造に直接的な関与をしない経費です。以下のような項目があります。
- 支払経費: 支払い額をそのまま経費とした原価。交通費、通信費、消耗品購入費等
- 月割経費: 長期の支払いを月割して、各月の消費額を計算した原価。償却費、貸借料、保険料等
- 測定経費: 測定した額を消費額とする原価。水道ガス光熱費等
- 発生経費: 当月発生分を消費額とする原価。棚卸減耗費等
- 福利厚生費: 従業員の福利厚生施設の原価
# 商品と製品
- 追加の加工をせずに販売するものを商品と呼び、自社で加工して販売するものを製品と呼びます。
# 変動費
- 変動費は、製造面では操業度に、販売面では販売量に比例して増減する費用です。
- たくさん売れたらその販売量に応じてコストが増加します。
# 固定費
- 固定費は操業度や販売量に関わりなく、固定的に発生する費用です。
- 販売量が増減しても決まった一定のコストが発生します。
# 原価計算の流れ
- 費目別計算
- 発生した原価を直接費と間接費に分類します。
- 部門別計算
- 直接費と間接費を発生部門に配賦(割り当て)して、部門ごとの原価を算出します。
- 製品別計算
- 部門の原価を、製品の製造数や作業時間等で製品に配賦(分配)します。
- 製品1単位あたりの原価を算出します。
# 原価計算の種類
- 原価の計算方法は種類があります。
- 集計方法によって適した方法を選択します。
- 生産形態による分類
- 個別原価計算
- 総合原価計算
- 原価の性質による分類
- 実際原価計算
- 標準原価計算
- 原価の集計範囲による分類
- 全部原価計算
- 部分原価計算
- 直接原価計算
# 個別原価計算
- 生産形態による分類の1種です。
- 注文を受けてから生産する等、業態に適用され、個々の原価をそれぞれ計算するポイントになります。
# 総合原価計算
- 連続生産やロット生産をしている場合に使用する原価計算です。
- 同じ製品を繰り返し作る事業では、掛かった総コストを生産数で割ることで単位あたりの売上原価を算出できます。
- 全ての製品が当月に投入して当月中に完成する場合、売上原価=製造費用となります。
- 通常、仕掛品(製造途中の状態)が発生するため、それを増減させて最終調整を行います。
- 売上原価 = 月初の仕掛品 + 当月の製造費用 - 月末の仕掛品
# 実際原価計算
- 実際に生産で消費された部材の数量、材料単価、作業時間を積み上げて原価を算出する方法です。
# 管理可能原価
- 原価のうち、管理者がコントロールできる範囲の原価を示します。
- 管理者がコントロールできる要素として、例えば 生産量、生産方法、個別の固定資産 等があります。
# 管理不能原価
- 原価のうち、管理者がコントロールできない範囲の原価を示します。
- 管理者がコントロールできない要素として、例えば、建物自体の減価償却費や本社から配賦される間接費 等があります。
- 管理者自身の業績評価には管理不能原価を含めないことが望ましいです。
# 標準原価計算
- 製品1つあたりの標準コストと、実際に発生したコストとの差額を計算することでロスの原因を探る計算方法です。
- あらかじめ、製造に掛かる標準原価(標準的な材料の消費量値と、標準的な材料の価格)を決めておき、実態との差分を分析します。
- 分析した結果は、価格差異、数量差異、時間差異、賃率差異等のように差分の原因別に分類されます。
# 標準原価計算の差異分析
- 直接材料差異
- 材料差異は、価格差異を先に算出し、後から数量差異を計算します。
- 価格差異: 原材料価格の変動によって発生する
- 数量差異: 材料を多く使いすぎた場合に発生する
- 直接労務費差異
- 労務費差異は、能率差異を先に算出し、時間差異を把握します。
- 賃率差異: 賃率情報による差異
- 時間差異: 作業時間による差異
- 製造間接費差異
- 予算差異: 総コストの差異
- 操業度差異: 作業時間の差異
- 能率差異: 作業効率の差異
# 全部原価計算
- 製品製造に掛かった全てのコスト(固定費/変動費の両方)を製造原価とする考え方です。
- 固定費も配賦対象になるため、販売量によって製品1つに配賦される固定費が増減します。
全部原価の補足
- 全部原価計算は、固定費を売上原価と期末在庫の両方に配賦します。
- 仮に、大量に生産して過剰在庫を抱えた場合を考えてみます。
- 「販売した製品」だけを見れば売上原価が少なく見える現象が発生します。(作れば作るほど低コストに見えてしまう)
- 実際にはその逆で、過剰在庫によって経営を圧迫しています。
- P/Lだけ見ると低コストで利益が出てきるように見えてしまうので、B/Sを見たり、直接原価計算で正しい状況を把握することも重要です。
# 直接原価計算
- 発生したコストを固定費と変動費に分けて計算する方法です。
- 固定費/変動費が分かれているとCVP分析などの業績評価に役立てることができます。
# 直接原価から全部原価への変換
- 直接原価計算と全部原価計算の違いは固定費の扱いです。
- 変換するには以下の式を使って、期末仕掛品の固定費を調整します。
- 全部原価の営業利益 = 直接原価の営業利益 + 期末仕掛品の固定費 - 期首仕掛品の固定費
- 全直末首 と語呂合わせて記憶している方も多いようです。
# 連産品
- 同じ材料・同じ工程から必然的に2つの製品が生まれることをいいます。
- 例えば以下のようなケースです。
- 牛1頭を食用加工した場合、ロース、バラ、サーロイン、牛脂..などの連産品が生まれます。
- 丸々1頭からロースだけを作るようなことは通常考えにくく、必然的に複数の部位ができあがります。
# 連結原価
- 連産品が生じる生産において、各連産品に分かれた後のコストはそれぞれで負担します。
- ただし、製品が分かれる前に発生したコストは、分かれた各連産品に分配します。
- この「分かれる前」に発生した原価のことを連結原価といいます。
# 安全性分析
- 企業の支払い能力や、資金調達の安全性を測るための分析です。
- 以下の2種類があります。
- 短期安全性: 短期の支払い能力を測る
- 長期安全性: 資金調達の安全性を測る
# 流動比率
- 短期の支払い能力を判断する指標です。
- 流動比率は以下の式で計算します。
- 流動資産 ÷ 流動負債
- 流動負債は1年以内に返済の必要な状況であるため、それ以上の流動資産が必要です。
- 足りない場合は、返済期日の長い銀行に借り換えたり、返済のために別の借入を行うこともあります。
# 当座比率
- 短期の支払い能力を判断する指標です。
- 当座比率は以下の式で計算します。
- 当座資産 ÷ 流動負債
- 当座資産はすぐに現金化できる資産のことです。以下のようなものが含まれます。
- 現金預金
- 受取手形
- 売掛金
- 有価証券
- 以下の項目は流動資産ですが当座預金には含まれません。
- 棚卸資産
- その他流動資産
# 固定比率
- 固定資産の原資を分析することで、長期的な安全性を測る指標です。
- 自己資本には返済義務がないので、その自己資本で固定資産が賄えていることが望ましいです。
- 固定比率は以下の式で計算します。
- 固定資産 ÷ 自己資本
# 固定長期適合比率
- 固定資産の原資を分析することで、長期的な安全性を測る指標です。
- 短期的に返済の必要がない資金調達先(自己資本、長期借入)で固定資産を賄えているかを確認します。
- 固定長期適合比率は以下の式で計算します。
- 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債)
# 自己資本比率
- 資金調達先のバランスについて安全性を測る指標です。
- 自己資本比率は以下の式で計算します。
- 自己資本 ÷ 総資本
# 負債比率
- 資金調達先のバランスについて安全性を測る指標です。
- 負債比率は以下の式で計算します。
- 負債 ÷ 自己資本
# インタレストカバレッジレシオ
- 営業外収支が利益に与える影響を測る指標です。
- インタレストカバレッジレシオは以下の式で計算します。
- 事業利益 ÷ 金融費用
- 事業利益 = 営業利益 + 受取利息 + 受取配当金
- 金融費用 = 支払利息 + 社債利息 + 売上割引 + 手形売却損
- 有利子負債が少ないほど、カバレッジレシオの値が高くなります。
# 正味運転資金
- 資金繰りの安全性を測るための値です。
- 正味運転資金は以下の式で計算します。
- 流動資産 - 流動負債
# 収益性分析
- 投下資本に対し十分な利益を獲得できるか、費用構造を分析します。
# 自己資本当期純利益率(ROE)
- 自己資本を元手にどれだけ利益を捻出できているかを測る指標です。
- 自己資本当期純利益率は以下の式で計算します。
- 当期純利益 ÷ 自己資本
# 売上高総利益率
- 売上高から売上原価を除いた残額である総利益に着目して、収益性を分析する指標です。
- 売上高総利益率は以下の式で計算します。
- 売上総利益 ÷ 売上高
- 売上高総利益は、粗利とも呼ばれます。
売上高総利益率の補足
- 売上原価を下げることで粗利率は高くなります。
- そのため、材料費、労務費、経費を削減する施策が効果的です。
- 売上原価が下げられなくても、価格を上げることで粗利率を高めることができます。
- 技術力や品質で競合と差別化できていたり、ブランド力が高ければ価格を上げることができます。
# 売上高営業利益率
- 粗利から販管費を除いた利益に着目して、収益性を分析する指標です。
- 主要事業の収益性を判断することができます。
- 売上高営業利益率は以下の式で計算します。
- 営業利益 ÷ 売上高
# 売上高経常利益率
- 営業利益から営業外収支(利息等)を除いた利益に着目して、収益性を分析する指標です。
- 売上高経常利益率は以下の式で計算します。
- 経常利益 ÷ 売上高
売上高経常利益率の補足
- 経常利益を改善するためには営業外の収支を含めた施策の検討が必要です。
- 例えば、負債を減らして利息を図る等が考えられます。
# 総資本経常利益率
- 総資本経常利益率は以下の式で計算します。
- 経常利益 ÷ 総資本
総資本経常利益率の補足
- 両辺に「売上高」を設定すると以下の式になります。
- (経常利益 ÷ 売上高) ÷ (売上高 ÷ 総資本)
- 左は「売上高経常利益率」、右は「総資本回転率」になります。
# 効率性分析
- 有形/無形の資産が効率的に使用され、売上に繋がっているかを分析します。
- 計算結果の単位は「回」です。
# 総資本回転率
- 総資本がどれだけ活用され、売上に繋がっているかを分析する指標です。
- 総資本回転率は以下の式で計算します。
- 売上高 ÷ 総資本
# 売上債権回転率
- 売上と売上債権の関係性を分析する指標です。
- 売上債権回転率は以下の式で計算します。
- 売上高 ÷ 売上債権
- 売上債権は、売上代金の未回収部分のことです。
- 受取手形、売掛金、電子債券 等があります。
売上債権回転率の補足
- 債権(売上代金)の回収ができていれば回転率が高くなります。
- 未回収の債権が多ければ回転率が低くなります。
- 特定の取引先に対して売上依存があると回収が滞り、回転率が低くなります。
# 棚卸資産回転率
- 棚卸資産の運用効率を測る指標です。
- 棚卸資産とは、製品在庫、仕掛品、原材料、貯蔵品等が該当します。
- 棚卸資産回転率は以下の式で計算します。
- 売上高 ÷ 棚卸資産
- あるいは、売上原価 ÷ 棚卸資産 で計算することもあります。
棚卸資産回転率の補足
- 多品種の製品を扱っていたり見込み生産をしていると、在庫や仕掛品(棚卸資産)が多くなり、回転率が低くなります。
# 有形固定資産回転率
- 有形固定資産の運用効率を測る指標です。
- 有形固定資産回転率は以下の式で計算します。
- 売上高 ÷ 有形固定資産
- ここで使う有形固定資産の値は、建設仮勘定と減価償却累計額を除いた数字を使います。
有形固定資産回転率の補足
- 有形固定資産をより多く稼働させれば回転率は高くなるように見えますが、販売されなければ在庫のままなので、回転率は高まらないことがあります。
- 設備稼働率とは異なり、有形固定資産の要否を判断する材料となります。
- 有休資産があったり著しく生産効率の悪い設備を使っている場合、回転率が低くなることがあります。
# 回転期間
- 分析対処の資産について、購入価額がどのくらいの期間で回収されるかを分析する手法です。
- 回転率の逆数で計算します。
- (例) 有形固定資産 ÷ 売上高
- 計算結果を12ヶ月で割ると、回収までに何ヶ月を要するかが分かります。同様に日にちで算出するときは365日で割れば良いです。
# 生産性分析
- 付加価値生み出す効率を測る指標です。
- アウトプットをインプットで割って計算します。
- 付加価値の算出方法は、以下の2パターンがあります。
- 売上高 - 外部購入価値
- 経常利益 + 人件費 + (支払利息 - 受取利息) + 貸借料 + 租税効果 + 減価償却費
- 生産性分析には、労働生産性と資本生産性の2種類があります。
# 労働生産性
- 従業員一人当たりの付加価値について効率を測る指標です。
- 労働生産性は以下の式で計算します。
- 付加価値 ÷ 従業員数
- 従業員数は年間のアベレージを使用するため、以下の式で算出します。
- (期初の従業員数 + 期末の従業員数) ÷ 2
# 資本生産性
- 資本から生み出される付加価値の効率を測る指標です。
- 資本生産性は以下の式で計算します。
- 付加価値 ÷ 資本
# 成長性分析
- 複数期間の売上高や営業利益を比較して、どれだけ成長したかを分析します。
# 売上高成長性
- 複数期間における売上高の成長度合いを分析します。
- 売上高成長性は以下の式で計算します。
- 今期売上高 ÷ 前期売上高
- 仮に前年比10%の成長をしていれば、成長率は1.10倍という結果が算出されます。
# CVP分析
- 企業の費用構造(固定費、変動費の割合)を分析する手法です。
- CVPはCost-Volume-Profit分析の略です。
# 固変分解
- 発生している費用を固定費と変動費に分けることです。
- CVP分析を行うため固定費と変動費を分解して考える必要があります。
# 変動費
- 変動費は、製造面では操業度に、販売面では販売量に比例して増減する費用です。
- たくさん売れたらその販売量に応じてコストが増加します。
# 固定費
- 固定費は操業度や販売量に関わりなく、固定的に発生する費用です。
- 販売量が増減しても決まった一定のコストが発生します。
- 固定費は、特定の事業から発生しているコストを個別固定費と呼び、全社に配賦するコストを共通固定費と分類することがあります。
# 変動費率
- 売上全体のうち変動費の占める割合を示します。
- 変動費率は以下の式で計算します。
- 変動費 ÷ 売上高
変動費率の補足
- 製品の販売量が変わって売上が増加した場合、変動費率に応じて費用も増加します。変動費率は変わりません。
- 一方、製品の価格が上がって売上が増加した場合は、変動費は変わらず売上高が増えるため、変動費率は低下します。
# 限界利益
- 売上から変動費を除いた残り(固定費と利益)です。
- 限界利益が固定費より多い時に利益が残ります。
- 限界利益の算出方法は方法は2パターンあります。以下の式で計算します。
- 売上高 - 変動費
- 固定費 + 利益
- 中小企業診断士試験では「限界利益」と呼ばれていますが、日商簿記では「貢献利益」と呼んでいるものです。
# 貢献利益
- 事業ごとの成果を評価する時に使用する値です。
- 事業の管理者がコントロール可能な範囲のみで評価が受けられるよう、固定費を個別固定費と共通固定費に分けて考えます。
- 共通費用は管理者がコントロールできないため、評価の対象にならないように計算します。
- 個別固定費は、事業管理者がその事業だけのために購入した固定資産などのことを言います。
- 貢献利益の算出方法は2パターンあります。以下の式で計算します。
- 限界利益 - 個別固定費
- 共通固定費 + 利益
# 管理可能原価
- 原価のうち、管理者がコントロールできる範囲の原価を示します。
- 管理者がコントロールできる要素として、例えば 生産量、生産方法、個別の固定資産 等があります。
# 管理不能原価
- 原価のうち、管理者がコントロールできない範囲の原価を示します。
- 管理者がコントロールできない要素として、例えば、建物自体の減価償却費や本社から配賦される間接費 等があります。
- 管理者自身の業績評価には管理不能原価を含めないことが望ましいです。
# 高低点法
- 最も操業度の高いデータと最も操業度の低いデータを使用して、大まかな変動費率を算出する手法です。
- 最大/最小データを取得する際、費用の大きさではなく操業度で選択します。
- 以下の式で計算します。
- (最高時の原価 - 最低時の原価) ÷ (最高時の操業度 - 最低時の操業度)
# 損益分岐点分析
- 売上高と総費用が同じになる点(つまり利益が0になる売上高)のことを損益分岐点(BEP:Break Even Point)と言います。
- 損益分岐点売上高を計算することで、経営上の余裕や目標とする売上高の算出に役立てます。
# 損益分岐点売上高の算出
- 利益が0となる売上高が損益分岐点売上高です
- 以下の計算式が基本形態です。
- 売上高 = 変動費 + 固定費 + 利益
- これは次のように変換できます。
- 利益 = 売上高 - 変動費 - 固定費
- 変動費は 売上高 × 変動費率 で算出できるため、次の式になります。
- 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
- (1 - 変動費率) は限界利益率と呼ばれます。
# 損益分岐点販売量の算出
- 利益がプラスに転じる販売量を算出します。
- 以下の式で計算します。
- 固定費 ÷ 製品1つあたり限界利益
- 計算の結果がちょうど利益が0にならない場合は切り上げます。
- 切り上げた場合: 損益がプラスになるので問題ない
- 切り捨てた場合: 損益がマイナスになるので不十分
# 目標利益達成売上高
- 目標とする営業利益を達成するための売上高です。
- 目標利益達成売上高は以下の式で計算します。
- (固定費 + 目標利益額) ÷ 限界利益率
# 安全余裕率
- 損益分岐点売上高(BEP)から、どのくらいの余裕があるかを測る方法です。
- 安全余裕率は以下の式で計算します。
- (売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 売上高
# 損益分岐点比率
- 売上高に対する損益分岐点売上高の比率を測る方法です。
- 損益分岐点比率は以下の式で計算します。
- 損益分岐点売上高 ÷ 売上高
# プロダクトミックス
- 複数の製品を製造する企業において、生産時間等の制約の中で利益を最大化する組み合わせを算出する方法です。
- 基本的な考え方
- 単位時間あたりの限界利益額が多い順に生産すれば良い
- あるプロダクトを生産しても個別固定費より得られる利益が少ない場合、生産しない方が良い(生産停止すれば個別固定費も発生しないと考える)
# 差異分析
- 原価について予定と実績の差異を分析し、対策を検討する手法です。
- 金額の差異は価格差異と数量差異の2種類があります。
- 標準数量/実績数量、標準価格/実績価格で分析を行います。
- 左下から「ひじ」、「ひじ」を基本としたT勘定を使うとわかりやすいです。(ひ: 標準、じ: 実績)
# 価格差異
- 実際に販売した商品の製造コストと、予定されている製造コストの価格差を把握する手法です。
- 価格差異は以下の式で算出します。
- 価格差異 = (標準価格 - 実価格) × 実消費量
- これにより実際に販売したすべての商品について、予定と価格差がどれだけあったかを把握することができます。
# 数量差異
- 数量差異は以下の式で計算します。
- 標準価格 × (実際販売量 - 標準販売量)
# 有利差異、不利差異
- 有利差異は、企業経営にとって有利な差異をいいます。
- 不利差異は、企業経営にとって不利な差異をいいます。
# ファイナンス
- 資金調達のことです。
- 資金を借りると利息が発生するので、低いコストで高いリターンを得るため、戦略的な資金調達が求められます。
# 現在価値
- 将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いたものです。
- 現在価値は以下の式で計算します。
- 現在価値 = 将来CF ÷ (1 + 割引率)^n
現在価値の補足
- 今100万円もらうか、来年100万円もらうか、この2つを比較すると「今もらう」方が得です。
- 仮に今100万円を得たら、それを運用して来年には110万円に増えます(年率10%で運用した場合)
- つまり、現在の100万円は来年の110万円と等価だと言えます。
- 将来の金銭価値を現在時点まで戻す計算が、割引計算です。
# 複利原価
- 資金を数年に渡って運用する場合、1年目に得た利息を追加投資に回して、2年目、3年目は更に大きな利息を得ます。これを複利と言います。
- 複利の考え方に則って将来の金額を現在価値に割り引く計算を複利原価計算と言います。
- 複利原価計算に使用する複利原価係数は以下の式で計算します。
- 1 ÷ (1 + 割引率)^n
- たとえば、3%割引率で3年間運用する前提で割引を行う場合、以下のように計算します。
- 1 ÷ {(1 + 0.03) * (1 + 0.03) * (1 + 0.03)} = 0.91514...`
- このように算出した複利原価係数を使い、将来に得られるキャッシュフローに複利原価係数を掛けることで現在価値を算出できる
- 例: 100万円 × 0.915 = 91万5,000円
# 複利年金原価
- 複利原価を年数分合計したものです。中長期に渡って同じ額のキャッシュフローが得られる場合に使用できます。
- たとえば、3%割引率が3年間続く前提なら、以下の計算式で計数を算出することができます。
- 0.971 + 0.943 + 0.915 = 2.829
- 3年間連続して同じ額のキャッシュフローが得られる場合、複利年金原価係数を掛けることで、総額を算出することができます。
- 例: 10万円×2.829=28万2,829円
# 複利表
- 下表は、年3%における複利年金原価と複利原価を表にしたものです。一覧表が用意されています。
- (参考) 複利表 (opens new window)/国税庁
年数 | 複利年金原価 | 複利原価 |
---|---|---|
1 | 0.971 | 0.971 |
2 | 1.913 | 0.943 |
3 | 2.829 | 0.915 |
4 | 3.717 | 0.888 |
5 | 4.580 | 0.863 |
# 企業価値
- 純資産額(あるいは時価総額)を企業価値とする考え方と、負債を含めた総資産の時価総額を企業価値とする考え方があります。
# 純資産額による評価
- 純資産の金額から企業価値を算出する方法です。
- 帳簿価格方式と再調達時価方式があります。
# 帳簿価格方式
- 貸借対照表(B/S)に記載されている情報を使用して企業価値を算出する手法です。
- 資産額から負債額を引いた額を企業価値として考えます。
# 再調達直方式
- 時価を使った企業価値の算出方法です。
- 資産及び負債を時価で計算し、資産額(時価)から負債額を引いた額を使用します。
# キャッシュフローによる評価
- 収益力から企業価値を算出する方法です。
- DCF(Discount Cash Flow)法を使用します。
# DCF(Discount Cash Flow)法
- 将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算出する方式です。
- DCF法は以下の式で計算します。
- V0 = CF1 ÷ (r - g)
- V0: 現在の企業価値
- CF1: 1年後に得られるキャッシュフロー額
- r: 割引率
- g: 成長率
# 事業投資の意思決定
# 正味現在価値法(NPV: Net Present Value)
- 事業から得られるキャッシュフローと投資額を比べることで投資価値を判断する手法です。
- 以下の手順で計算します。
- 各期のCFを現在価値にして合算
- 投資額を減算
- 投資要否の判断
- NPVは以下の式で計算します。
- NPV = CFn ÷ {(1 + r)^n} + CFn1 ÷ {(1 + r)^n1} + CFn2 ÷ {(1 + r)^n2}... - 投資額
- NPVがプラスの値であれば投資価値があ理、NPVがマイナスなら投資価値がないと判断します。
# 内部収益率法(IRR: Internal Rate of Return)
- 正味現在価値が0となる割引率を算出し、収益率を基準とした投資判断を行います。
- 内部収益率 > 資本コスト: 投資すべきである
- 内部収益率 ≦ 資本コスト: 投資すべきではない
- NPVの計算は手順が複雑です。以下の手順で計算します。
- 複数の割引率を試しに計算し、期待収益が0に近い割引率を探ります。
- 各期のCF × 年金原価係数 - 投資額 = 0
- (例)年金原価係数: 10%=2.486、9%=2.531
- 80万円 × 2.486 - 200万円 = 198.88万円 - 200万円 = -1.12万円
- 80万円 × 2.531 - 200万円 = 202.48万円 - 200万円 = 2.48万円
- 0になる値は、9%〜10%の間にあることが分かる
- 算出された2つの金額の絶対値を使い、収益率0の割引率を算出します。
- プラス収益の絶対値 - (マイナス収益の絶対値 + プラス収益の絶対値)
- 2.48 - (1.12 + 2.48) ≒ 0.689
- 9% + 0.689% = 9.689% (正しいか要確認)
# 回収期間法(PBP: PayBack Period)
- 投資額を何年で回収できるかを測定する投資判断の手法です。
- 回収期間が短いほど良いです。なぜなら、早期回収できたら次の投資に資金を回せるためです。
- PBPは以下の式で計算します。
- 投資額 ÷ 1期間のキャッシュフロー
- (例) 3,000万円 ÷ 1,200万円 = 2.5年
- PBPは以下の特徴があります。
- メリット: 計算がシンプルなため会計知識がない意思決定者にも分かりやすい
- デメリット: 時間による割引効果を考慮していない
- 時間価値を考慮した割引回収期間法もあるため、先ほど記載した計算方法は単純回収期間法とも呼ばれます。
# 収益性指数法(PI: Profitability Index)
- 投資額とキャッシュフローから収益性指数を算出して投資意思決定を行う手法です。
- PIは以下の式で計算します、。
- 総キャッシュフロー ÷ 投資額 = 収益性指数
- 収益性指数 ≦ 1: 投資から十分な収益が得られない
- 収益性指数 > 1: 投資価値がある
# 資金調達
- 企業が資金を調達する方法は、財務諸表から2つの種類に分類されます。
- 負債(Debt)
- 株主資本(Equity)
# 負債の調達
- 株主以外から調達した資金を指します。
- 借入や社債発行等の資金調達をデット・ファイナンス(Debt finance)と呼びます。
- 夫妻の調達は以下のようなものがあります。
- 借入金
- 支払手形
- 買掛金
- 未払金
- 返済まで1年以内の負債は流動負債、それ以外は固定負債に分類します。
- 自己資本(株主資本)に対する言葉として、負債のことは他人資本とも呼ばれます。
# 株主資本の調達
- 株主資本は返済義務がなく、自己資本と呼びます。
- 新株発行等をエクイティ・ファイナンス(Equity finance)と呼びます。
# 直接金融、間接金融
- 直接金融: 市場から直接的に資金調達を行うことを言います。
- 新株発行、社債発行、コマーシャルペーパーの発行等
- 間接金融: 銀行等を仲介して、間接的に資金調達を行うことを言います。
- 銀行借入等
# 外部金融、内部金融
- 資金調達の源泉が、企業の内部か外部によって分類する手法です。
- 外部金融: 借入金、売掛金、支払手形、社債発行、新株予約権等
- 内部金融: 内部留保、減価償却費等
# リース
- 他社からパソコンや生産設備等の資産を借り、その対価として金銭を支払う契約のことです。
- ファイナンスリースとオペレーティングリースがあります。
# ファイナンスリース
- 耐用年数に相当する期間、リース資産を貸し借りする契約です。
- ファイナンスリースには2つの特徴があリマス。
- 原則、中途解約できない(ノンキャンセラブル)
- 途中で不要になっても、契約期間内は継続的な支払が発生する
- あるいは、フルペイアウトする
- あるいは、残額全てを支払う
- 借り手はリースしたものを資産として計上し、リース期間で減価償却の処理を行います。
# オペレーティングリース
- ノンキャンセラブル、フルペイアウト の要件が無いリース契約をいいます。
- 利用した分だけリース料としての仕分けを行い費用処理しマス。
# 資本コスト
- 資金を調達すると、株主に対する配当金や負債に対する利子等が発生します。このような資本調達におけるレートに相当するものを資本コストと言います。
# 広義の資本コスト
- 負債の調達コストと、株主資本の調達コストの両方を示します。
# 狭義の資本コスト
- 株主資本だけの資本コストを示します。
# 期待収益率(ハードルレート)
- 会社のオーナーである株主が考えている最低ラインの収益を期待収益率と言います。
- 株主は儲からない事業への投資は避けたいので、投資に対して一定以上の収益が得られることを期待しています。
- この期待収益率を会社視点で見ると、それが株主資本に対するリターン額となります。
- 株主資本に求められるリターン率なので、これ自体を資本コストとも言います。
# 加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital)
- 負債コストと自己資本コストから、資産全体に掛かるコストを加重平均で算出する手法です。
- WACCは以下の式で計算します。
- 負債コスト × 節税効果 + 自己資本コスト
- = D / (D + E) × rD × (1-t) + E / (D + E) × rE
- 負債コスト、自己資本コストはそれぞれ以下の式で計算します。
- 負債コスト = 負債 ÷ 総資本 × 利子率
- = D / (D + E) * rD
- 自己資本コスト = 自己資本 ÷ 総資本 × (投資家にとっての)期待収益率
- = E / (D + E) * rE
- ただし、利子には節税効果が働くのでそれを計算式に含めます。節税効果は以下の式で計算します。
- 負債コスト × (1 - t)
# MM理論
- 負債と自己資本のバランスによって資本コストが変わることを踏まえ、最適な資本コストを考える研究を行なった理論です。
- 研究者2名の頭文字(モジリアーニ、ミラー)の頭文字を取ってMM理論と呼ばれています。
# MM理論: 完全資本主義
- MM理論では完全資本市場を以下のように定義しています。
- 効率的市場仮説: 市場参加者には、情報が一様に行きわたるという前提
- 取引コストや取引に制限がない
- 税金が発生しない
- 商品の流動性は十分
- この前提においては、どのような資本構成であっても資本コスト(債権者および株主へのリターン)が同じになります。
- そのため 「完全資本市場においては資本構成がどのような状態であっても企業価値は同等である」 と結論付けられます。
# MM理論: 税金の導入
- 税金のある環境を考えると、利益に課税されるため、利益を減らす利子には節税効果が生じると言えます。
- 一方、株主へのリターンは税引後の利益から配当されるため、節税効果は生じません。
- つまり、負債が多いほど企業価値が高いものと考えられます。
- MM理論における税金のある世界では、負債100%の資本構成が最も企業価値が高いという結論になります。
- 現実世界では負債100%の企業は信用が得られないため、企業間の取引に影響が出ます。負債100%が最適な資本構成とは言い切れません。
# ペッキングオーダー仮説
- 資金を調達する方法が複数ある場合、資本コストの低いものから順に選択するという理論です。
- 以下の順番に選択されると考えられます。
- 内部資金: 利益剰余金等を原資とする調達で、資本コストが掛かりません。
- 借入: 銀行等の借り入れを原資とする調達で、利子率のコストが掛かります。
- 増資: 新株発行等による調達で、借入よりも高いコストが求められます。
# 財務レバレッジ
- 事業拡大のため、どれだけ負債を活用しているかを測る指標です。
- 財務レバレッジは以下の式で計算します。
- 総資本 ÷ 自己資本
- 財務レバレッジの単位は○倍で表現します。
# 個別銘柄の評価
# CAPM: Capital Asset Pricing Model
- 個別の株式銘柄の資本コストを評価する理論です。
- キャップエムと読みます。
- CAPMは以下の式で計算します。
- 資本コスト = リスクフリーレート + β × マーケットリスクプレミアム
# リスクフリーレート
- リスクフリーレートは、リスクが極めて低い(あるいはゼロの)期待収益率のことを言います。
- リスクがゼロに近い日本国債で例えられます。
# マーケットリスクプレミアム
- リスクある株式に乗っている上乗せ利回りのことです。
- 全体の利回りからリスクフリーレートを取り除く子で上乗せ分だけを計算することができます。
- リスクプレミアムは、以下の式で計算されます。
- 市場の期待収益率 - リスクフリーレート
# β(ベータ)値
- 市場全体の値動きに対する個別銘柄の連動具合を表現する値です。
- TOPIX等の指数が1%動いた時、その個別銘柄の株価が連動して何%上下するかを示すものです。
- ベータ値は以下の式で計算します。
- 個別銘柄と市場の共分散 ÷ 市場の分散
- ベータが1ちょうど: 市場と連動した値動きをします。
- ベータが1より小さい: 市場との連動が少ないことを示します。
- ベータが1より大きい: 市場の変動よりも大きく値動きすることを示します。
# 東京株価指数(TOPIX: Tokyo Stock Price Index)
- 基準日(1968年1月4日)の時価総額を100として、その日の株価がどれだけ増減したかを示す指標です。
- プライム上場している全ての企業を集計対象としています。
# 株式評価
- 個別株式における割高/割安を判断します。
- 株価の人気度合いは株価として反映されます。
- 企業の経営状態とや配当政策で株価が変動します。
# 配当
- 企業が利益を上げた時、投資家である株主に対して金銭の還元を行う施策のことです。
- 投資家はなるべく多くの配当を出して欲しいと考えるため、配当を多くすると株式の人気が高まると考えられていました。
- 一方配当を出しすぎると内部留保を確保できずに企業の成長性が低下してしまいます。
- 最近では、「適切な金額の配当を行う会社」が評価される傾向にあります。
# 配当性向
- 当期純利益に対して配当する金額の総額を示します。
- 配当性向は以下の式で計算します。
- 配当総額 ÷ 当期純利益
# 配当利回り
- 投資家によってインカムゲインの収益性を示す指標です。
- 配当利回りは以下の式で計算します。
- 1株あたり配当金 ÷ 株価
- 株価が高くなると利回りが低くなるので売却圧力が掛かります。
- 一方、株価が低くなると利回りが高くなるので購入圧力が掛かります。
# 株価収益率(PER: Price Earnings Ratio)
- 利益額をベースとして、株価の割安度を判断する指標です。
- PERは以下の式で計算します。
- 株価 ÷ 1株当たり収益率
- PERは○倍で表現します。数字が大きいほど割高であることを示します。
- 株価が高くなると割高になります。
# 1株あたり純利益(EPS: Earings Per Share)
- 一株あたりの純利益額を表したものです。
- EPSは以下の式で計算します。
- 当期純利益 ÷ 発行済み株式数
# 株価純資産倍率(PBR: Price book value)
- 株価と純資産の比率を示す指標です。
- PBRは以下の式で計算します。
- 株価 ÷ 一株あたり純資産
- PBRは○倍で表現します。数字が低いほど株価が割安であることを示します。
# 配当割引モデル(DDM: Dividend Discount Model)
- 配当金の金額から株価の割高/割安を判断する手法です。
- 配当金の成長度合いによって、ゼロ成長モデルと定率成長モデルの2種類があります。
# ゼロ成長モデル
- 今後も同額の配当金が継続することを前提とした企業価値算定のモデルです。
- ゼロ成長モデルは以下の式で計算します。
- 配当金の金額(D) ÷ 割引率(r)
# 定率成長モデル
- 配当金の支払額が一定の割合で増加していく(成長していく)ことを前提とした企業価値算定のモデルです。
- 定率成長モデルは以下の式で計算します。
- 来期の配当金の金額(D1) ÷ {割引率(r) - 成長率(g)}
- 配当金は1年分成長した来期の金額を使う点がポイントです。
# ディスカウントキャッシュフロー法(DCF法)
- 企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引くことで企業価値を算出するモデルです。
- DCF法は以下の式で計算します。
- フローキャッシュフロー(FCF) ÷ 加重平均資本コスト(WACC)
- なお、DCF法において一定成長モデルを適用すると以下のような計算式とすることもできます。
- 来期の予想フリーキャッシュフロー(FCF1) ÷ {加重平均資本コスト(WACC) - 成長率(g)}
- ここで使われるFCFは、以下の式で示す利益概念とすることが多いようです。
- NOPAT + 減価償却費 - 設備投資額 + 運転資本増減額
# NOPAT
- 税引後営業利益を示す利益の概念です。
- ノーパットと読みます。
- NOPATは以下の式で計算します。
- EBIT × (1 - 実効税率)
# EBIT
- 税引前営業利益を示す利益の概念です。
- イービットと読みます。
- EBITは以下の式で計算します。
- 経常利益 - 受取利息 + 支払利息
# 収益還元方式(インカムアプローチ)
- 伝統的な企業価値算出のモデルです。
- 配当割引モデル(DDM)の考え方ですが、使用する割引率の値が異なります。
- 配当割引モデル(DDM)の場合: 割引率に短期〜中期の債権利回りを使用する
- 収益還元方式の場合: 割引率に長期の債権利回りを使用する
# 純資産方式
- 伝統的な企業価値算出のモデルです。
- 貸借対照表の資産と負債と時価に換算することで、その差額から企業価値(純資産相当)を算出します。
# マルチプル法
- 類似する企業のデータを比較することで企業価値を算出するモデルです。
- あくまで業界標準との比較に過ぎないため、その会社独自の技術等をどのように評価するかという課題があります。
# M&A(Mergers and Acquisitions)
- Mergersが合併、Acquisitionsが買収を意味します。
# MBO(Management Buy Out)
- 既存の経営陣が自社の事業を買い取る形で独立する買収手法です。
- 雇用、給与、組織風土等をそのまま引き継ぐ形になるため、スムーズに事業を開始できるメリットがあります。
# MBI(Management Buy In)
- VC(ベンチャーキャピタル)等が会社の所有権を得るだけでなく経営者を送り込む形で実施する買収の手法です。
- 新しい経営者が経営の体質改善/強化を行うことで企業価値を高め、別の会社に売却する際にキャピタルゲインを狙います。
# LBO(Leveraged Buy Out)
- 買収する企業の資産を担保に資金を得ることで買収を成立させる手法です。
- 負債に頼った買収のため、レバレッジと呼ばれます。
# EBO(Employee Buy Out)
- 一般の従業員が自社の事業を買い取る形で独立する買収方法です。
- MBOの従業員版です。
# TOB(Take Over Bit)
- 不特定多数から証券市場外で株式を買い付ける買収手法です。
- この買収手続きは金融証券取引法で定められています。
- 株式公開買い付けとも言います。
# グリーンメール
- 関連企業に買い取らせることを目的に株式を買い占める手法です。
- 語源は、ドル紙幣の緑色と脅迫状を示すブラックメールの造語です。
# ホワイトナイト
- 敵対的な買収を行う相手に対し、好条件で買収を行う第三者のことです。
- 救世主的な意味合いで白馬の騎士と名付けられています。
# ポイズンピル
- あらかじめ、買収者ではない株主に有利な条件で新株を発行する権利を用意する防衛手法です。
- 買収時に株式数が増えることで買収のコストが高まるため、買収を諦める可能性があります。
# 意思決定会計
- 複数の代替案から適切なものを会計的に選択する際の考え方です。
- 意思決定は構造的意思決定と業務的意思決定に分類されます。
# 構造的意思決定
- 複数年度にわたる大規模な投資に関する意思決定を指します。
- キャッシュフローを前提として、正味現在価値法や内部収益率法によって意思決定を行います。
- 具体的には設備の導入等で使われます。
# 業務的意思決定
- 単年度内における投資の意思決定を指します。
- 具体的には、アウトソース活用の要否や受注すべきかの判断等で使われます。
# 機会原価(オポチュニティコスト)
- 複数の代替案がある中で一方しか選べない時に、選ばなかった代替案から得られたはずの利益のことを言います。
- 得られるはずの利益を逸したことで、それを損失として認識します。
# 埋没原価(サンクコスト)
- どの代替案を選んだとしても発生するコストのことを言います。
- 原価の発生が確定しているため、どの代替案を選ぶかの意思決定に組み込まないように注意が必要です・
# 期待値
- リターンの平均的な値です。
- 得られるリターンと、リターンを得られる確率を使って算出します。
- 期待値は以下の式で計算します。
- Σ(期待収益 × 発生確率)
# 分散
- 予想される結果のバラつき具合を示す値です。
- 偏差の二乗の期待値です。
- 分散は以下の式で計算します。
- 分散 = Σ(偏差^2 × 発生確率)
- 偏差 = Σ(ある条件の収益 - 期待値)
# 標準偏差
- リスクを測る代表的な指数です。
- 標準偏差は以下の式で計算します。
- √分散
標準偏差の計算例
- 前提条件
- 代替案1: 100万円 50%
- 代替案2: 50万円 30%
- 代替案3: 10万円 20%
- 計算①: 期待値
Σ(期待収益 × 発生確率)
- (100万円 × 0.5) + (50万円 × 0.3) + (10万円 × 0.2)
- = 50万円 + 15万円 + 2万円
- = 67万円
- 計算②: 偏差
Σ(ある条件の収益 - 期待値)
- 案1: 100万円 - 67万円 = 33万円
- 案2: 60万円 - 67万円 = -7万円
- 案3: 20万円 - 67万円 = -47万円
- 計算③: 分散
Σ(偏差^2 × 発生確率)
- (33万円^2 × 0.5) + (-7万円^2 × 0.3) + (-47万円 × 0.2)
- = 544.5 + 14.7 + 441.8
- = 1001
- 計算④: 標準偏差
√分散
- √1001 ≒ 31.684..万円
# リスクマネジメント
# リスク回避者
- 不確実なリターンより、安定したリターンを好む者を言います。
- リスク回避者はリスクを極端に嫌うため、リスクプレミアム(リスクある株式に期待するリターン)は必然的に大きくなります。
# リスク愛好者
- 同じリターンならリスク(変動幅の大きいもの)の高い方を選ぶものを言います。
- リスクプレミアムはマイナスとなります。
# リスク中立者
- リスクの大小を考慮せずに意思決定できる者を言います。
- リスクプレミアムはゼロになります。
# リスクヘッジ
- リスクを予測して対応できるように備えることです。
- 先物取引などによってリスクを低減する手法が取られます。
# 先渡取引(Forward Contract)
- 将来の定めた期日に特定商品を売買する契約のことです。
- 先渡では、店頭で現物による取引が行われることが特徴です。
# 先物取引
- 将来の定めた期日に特定商品を売買する契約のことです。
- 先物は取引所で行われ、差金決済(売り買いの差額)を行うことが特徴です。
# 金利スワップ
- 同一の通貨(日本円等)で変動金利の債務から固定金利の債務に切り替える等でリスクを変化させることです。
# 通過スワップ
- 異なる通貨(日本円と外貨等)を交換してリスクを変化させることです。
# インシュアリング
- 保険に加入する権利を購入することです。
- 将来の状況に応じて権利の行使/放棄を選択して損失を抑える手法です。
# リスク分散
- 複数の資産に分散して投資を行うことでリスクを軽減する手法っです。
- 証券のポートフォリオのようなものです。
# デリバティブ
- 為替、債券、株式などの売買を行う権利/義務を商品化したものです。
- 株式の信用売買のようなものです。
- 損失を抑えるため、ヘッジング取引等で使用されます。
# リスクの種類
# 純粋リスク
- 災害や事故などの不確実な事象によって発生するリスクです。
- 不確実なため避けることができない特徴があります。
- リスクが顕在化すると損失のみが発生します。
# 投機的リスク
- 不確実性から損失だけではなく、利益を獲得できる可能性があるリスクを言います。
- 投機的リスクには次のようなものがあります。
- 価格変動リスク: 株式などの資産価値が変動するリスク
- 金利リスク
- 為替リスク
- 信用リスク: 負債の返済、利子の支払いが遅れるリスク
- 流動性リスク: 買い手が見つからなかったり、値段がつかないリスク
# システマチックリスク
- 市場全体で発生するリスクです。
- 全ての資産が影響を受けるため、分散投資ではリスクを軽減できません。
# アンシステマチックリスク
- 個別の資産に特有で発生するリスクです。
- 操業のトラブルや経営陣の問題といった業績低下のリスクだけでなく、大口受注やヒット商品の販売などによる業績向上リスクも考えられます。
- 分散投資によって軽減することができます。
# 為替
- 外国資産を使った取引をするには、異なる通貨での為替レート(交換の比率)で通貨交換を行います。
- 為替レートが変動することで為替リスクが発生します。
# 輸入企業のリスクヘッジ
- ここでは日本企業がUSドルで取引をすることを想定します。
- 輸入企業が考慮するリスクは「円安」による損失です。
- 単価100ドルの製品を購入することを考えます。
- レートが 100 円/USD のレートでは、購入価格は 10,000 円です。
- レートが 150 円/USD のレートまで円安が進んだ場合、購入価格は 15,000 円になります。
- 輸入時に発生する円安リスクに対しては、ドル買い(円売り)の為替予約が効果的です。
- 110 円/USD で予約をしておけば、大きく円安が進んでも 11,000 円の支払いで済みます。
- 円高に進んだ場合でも 11,000円 の支払いが必要なので、その場合は損をしてしまいます。
- プットオプションでリスクヘッジをすることもできます。